民話の地を訪ねて

7月と8月は屋内で「所沢の民話」の朗読会を行いました。2回の朗読会で合計13の民話が11人によって紹介されました。
民話の生まれた場所が今どうなっているのか? 私は、地図を片手に、まず桜淵地蔵尊にまつわる悲話と阿弥陀さまの話が生まれた山口地区を訪ねました。

桜淵地蔵尊は下山口駅から西武園ゴルフ場に向かう細い道を5~6分歩いた柳瀬川の橋のたもとにありました。社の前には「桜淵延命地蔵尊」と書かれた幟が立っていましたので、すぐに見つけることができました。
地蔵尊は真赤な腹掛けを付け、その前には生花が供えられてありました。物語の中では、この地蔵尊は不幸な赤子とその母親の菩提を弔うために立てたと伝えられています。時代を経てもなお地蔵尊に寄せる人々の温かな心遣いが、そこには受け継がれているようでした。
一方、下山口駅から所沢立川街道(55号線)に出ると、道を挟んで反対側に来迎寺があります。
「車返しの弥陀」や「行脚の弥陀」に登場するこの寺は鎌倉時代初期に創立された古い寺です。
参道の入り口に「この先行き止まり」の看板が立てかけられてありました。いやな予感が脳裏を過った。
案の定、参道の突き当たりにある山門は閉ざされていました。山門の脇の私道から寺の境内に入り、最初に目にしたのは土木工事々務所の建物でした。
大きなトラックが2台寺の境内に駐車してあり、工事用資材らしきものが本堂の上に積み重ねられてありました。また、山門から本堂へ通じる参道一帯はトラックのタイヤで踏み潰されていました。
千年近い歴史をもち、霊験あらたかな阿弥陀様を祀った寺として知られていた寺の変わり行く光景を目にし、複雑な気持ちで次の場所に向かいました。